「罵倒の作法」02

日々よ、愛うすきそこひの闇よ

 

日本の現代詩においても特異な存在として多くの人々に影響を及ぼし、<ディアスポラの詩人>とも呼ばれる金時鐘(キム シジョン)の詩をテキストに、流浪する人々の姿を描いた演劇作品。

日本の植民地統治下の朝鮮で日本語に親しみ、皇国少年として育った金時鐘は、朝鮮語に疎く、ハングルもうまく書き取れないまま終戦を迎える。その後、朝鮮人としての自覚を深めるとともに社会主義に共鳴し、済州島四・三事件に関わり、追われるように日本に渡り、詩を書き始める。日本語で詩作を行うことに対する同胞からの強い批判に晒されながらも、日本語にこだわり続けてきた理由を彼は「日本語への報復」とある時に表現している。
 

金時鐘の詩に罵倒を押し殺して生まれ出たかような言葉の感覚を読み取り、本作は長期プロジェクト「罵倒の作法」のクリエイション第一弾として上演された。ある人々の身体に刻まれた記憶と声、拭い難い記憶を抱えたまま生きていかねばならない日々の中で紡がれた言葉、そのような言葉を抱えた生の在り方に着目し、同時に、他者の言葉を語ることを生業とする俳優という演劇の根幹をなす特異な存在によって描き出しうる生の可能性を探求した。


初演 / 2022年、テルプシコール(東京)、The side(京都)
上演時間 / 90min

演出 / 木村悠介
テキスト / 金時鐘『集成詩集 原野の詩』(立風書房)

出演 / 磯和武明 伊藤彩里 井上知子 三鬼春奈 三田村啓示

照明 / 杉本奈月(N₂ / 青年団)
衣装 / 新庄範子
舞台監督 / ステージワークURAK
演出助手 / 山崎恭子(居留守)
制作 / 金井美希

文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業

主催 / &Co.